坂井輪診療所

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自然な眠りを忘れた現代人 ~疲れたから寝る、時間だから寝る~

2019/12/13
[ 睡眠の病気 ]

先日こんな患者さんがおられました。前医では数十年前からマイスリーをもらっていたのに「突然来年の3月に販売されなくなる?(聞き違いでないかと思うのですが)だからベルソムラに変更する!」と言われ、それから不眠になり血圧も上がってきたというのです。患者さんの年齢は74歳、なるほどと、「前医はあなたのことを大切に考えてる立派な臨床医ですね」と伝えました。そう、来年には後期高齢者になる、認知機能低下のリスクが高くなるベンゾ系の睡眠導入剤は卒業しようということですから、そのように患者さんに説明したところ納得されました。

生活時間にあわせて睡眠導入剤を服用する現代人

患者さんは、とうの昔に自然な睡眠を忘れてしまっていたのです。忙しい現代社会に生活時間を合わせるために、スケジュールに合わせて睡眠導入剤を服用し、そして寝る。薬さえ飲めば、いつのまにか寝てしまう、朝方若干ぼんやりするが動いているうちにしゃっきりする、そして仕事を終え、また睡眠導入剤で寝る。そうです、睡眠導入剤は脳全体の活動を強制的に抑制しますので、だから起きていられなくなるのです。意識を失うように寝てしまいますので、まさにパソコンの電源を強制終了(シャットダウン)させるようなものです。

自然な眠りのしくみとそれを妨げるもの

昔の人はどうやって眠っていたのでしょう。日の出とともに活動をはじめ、日中は労働し、夕方には疲れがたまり、眠くてしょうがなくなります。実は「アデノシン」という物質が覚醒中に蓄積し、やがて睡眠中枢(視床下部の前方にある)を活性化し寝落ちしてしまうのです。アデノシンとは高校生の生物で習うATP(アデノシン三リン酸)のアデノシンです。詳細は不明ですが、すべての生物の生命活動で利用されるエネルギー物質と関係があるらしいのです。 https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/web/15/403964/082900048/?P=3

また朝日の光を浴びると体内時計がリセットされます。そして14~16時間後にメラトニン(睡眠ホルモン)が脳内の松果体から分泌され、睡眠中枢を活性化します。ですから、朝6時に起きれば、夜10時には眠くなるのです。しかしその時間帯にテレビをみたりパソコンで仕事をしていると、脳が刺激され覚醒反応が強まり、メラトニンの刺激が抑制されます。まさに現代病ですね。 http://www.tainaidokei.jp/mechanism/3_3.html
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-062.html

しかし加齢とともに生理的に必要な睡眠時間は短くなります。若いときは8時間は必要ですが、高齢者では6時間も眠れば十分疲労がとれるようです。もちろん個人差はありますが。やがて必要な睡眠時間を経過すると、覚醒中枢(視床下部の後部にある)が活性化し、すっきりと目が覚め一日が始まります。このように、わたしたちの脳内には、睡眠中枢と覚醒中枢のスイッチを切り替えるしくみがあるのです。 https://www.blog.crn.or.jp/report/04/69.html

このように人間の身体には、脳をはじめ、60兆個のすべての細胞の中に時計遺伝子をもっています。ですので脳にあるおおもとの時計がくるってしまったら体調を崩すのは当然ですね。不規則労働、時間外労働などは現代病の原因の一つだと思います。 またベンゾ系の睡眠導入剤の中にもいろいろな特徴がありますが、共通した副作用、そして依存症があります。そして最近は、ベンゾ系以外の睡眠導入剤もつかわれるようになり、睡眠中枢や覚醒中枢に作用し、比較的生理的なお薬もあります。次の機会にお話ししたいと思います。

出典元:眠りのメカニズム(厚労省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-01-002.html
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