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SWANネットQQを活用し、高齢者から救急難民を出さない!

2023/4/14
[ 地域医療を考える ]

「 新潟市の救急医療はどうなるのか?」https://www.niigata-min-sakaiwa.com/zakki/5373 で書きましたように、新潟県は新潟市内に高度急性期医療を担う「新しい救急拠点」を設置するしかないという結論に達しました。そして地域包括ケアを支える病院を類型化し、急性期医療を担う病院を「救急拠点型」、慢性期医療を担う病院を「地域密着型」と機能分化させるという方向で検討しています。

地域包括ケアを支える「救急拠点型」病院との医療連携構築

高齢者、とりわけ介護保険サービスを利用している高齢者は、医療、介護、福祉、生活支援など、多職種の支援と見守りの中で暮らしています。生活の場との連続性を考慮するならば、できる限り近隣の急性期病院に入院できることが望ましいと思われます。入退院の支援をし、病院と居宅をつなぐのはケアマネージャーであり、ケアマネが持っている情報、病歴、ADL、生活背景などの情報を、あらかじめ地域の病院と共有できていれば、救急搬送も治療方針も的確に判断されるのではないかと思います。

新潟市では、R3年「在宅医療・救急医療連携推進パイロット事業」を西区で開始しました。「医療情報とACP」を「にいがた救急連携シート」に記載し、「SWANネットQQ」に貼り付けます。西区を走るすべての救急車と西区急性期6病院の救急室の端末で閲覧することができます。R3年には施設入居者を対象として、R4年には居宅で生活されている方を対象とし、コロナ禍の下ではありますが着実に登録が進んでいます。

救急車現場滞在時間の短縮をめざして 新潟市 36.3分(R2年)

「救急搬送困難事案」とは現場滞在時間30分以上 かつ 医療機関への照会4回以上の場合をいいます。しかし新潟市ではすでに30分を大幅に超えているのです。パイロット事業では、高齢者が救急要請すると、まずSWANネットQQに登録されているか否かを聞かれます。登録済であれば現場到着前に救急車内で登録情報を確認し、現場到着と同時に受診歴のある病院へ連絡されます。病院は登録情報を確認し、救急車の到着を待ちます。もし受診歴のある病院の受け入れが困難であったり、病院受診歴がない場合は、6病院のいずれかに受け入れを要請し、可能な限り受け入れることになっています。西区内の病院であれば、地域包括ケアシステムとの連続性が保たれやすくなります。

当院における「にいがた救急連携シート」作成率 42%

当院の外来に定期通院されいる介護保険認定者数は192人、うち居宅150人中71人(47%) 居宅系施設42人中10人(24%)の方が連携シートを作成されていました。当院だけで42居宅介護支援事業所がかかわっており、うち21事業所の協力がありました。今年度中には、希望者全員の連携シート完成を目指して働きかけていきたいと考えています。当院にかかりつけの患者さんから救急難民を出さないためです。

わたしたちの目指すもの「いのちのひとりぼっちをつくらない」

2025年問題突入まであと2年、その後医療需要は2030年まで増加、介護需要は2040年以降も増加します。2040年とは、団塊ジュニア世代が前期高齢者(65歳以上)になる年度です。この時代に育った人々は、バブル崩壊後に大学を卒業し、就職氷河期時代を生きてきた世代です。その後非正規雇用が拡大され、ワーキングプアがたくさん生まれた世代です。その世代が高齢者になったとき、日本の社会保障制度はもつでしょうか?またその後も日本の少子高齢化は進み、2065年には高齢化率が40%に近づき、この割合を保ったまま日本の人口は減り続けると予測されています。2065年問題とは、団塊ジュニアが90歳になる年度なのです。

わたしたちは、どんな時代になろうとも、医療者の立場として、最も困難な人々を見捨てない、最期まで寄り添っていこうと考えています。「いのちのひとりぼっちをつくらない」ために、職員全員で議論を積み重ね、課題を抽出し、どうやって解決するのか? 自分たちのできることは何か? ひとりひとりの職員も年をとりますが、若い世代に引き継ぎながら、わたしたちの目指すものを守っていきたいと考えています。

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