坂井輪診療所

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肥満高血圧 どうして、くすりを飲んでも下がらない?

2020/2/2
[ 高血圧症 ]

「治療抵抗性高血圧」とは

60代女性、長年の高血圧症で治療中ですが、最近どんどん血圧が上がってきて、自宅でも200以上になることがありました。諸事情によるストレスを抱えていたため、抗不安薬や睡眠導入剤も処方し、一時は改善していたのですが、再度血圧が上昇してきたため降圧剤を増やしました。血管を拡張する「カルシウム拮抗薬」、塩分を排出する「利尿薬」、そして血圧ホルモンを抑える「RA系抑制薬」です。しかし効果がありません。この3種類の薬をつかってもコントロールできない高血圧を「治療抵抗性高血圧」と呼びます。

「RAシステム」人類の祖先が進化の過程で獲得したもの

さて、人間の身体の60%は水分でできており、細胞内に40%、細胞外に20%存在します。その細胞外の水分量を維持するためにはナトリウムイオンによる浸透圧が必要です。人間の祖先が海から陸に上がったとき、乾燥した陸上で暮らすため、腎臓はRAシステムを進化させました。腎臓の糸球体では血液中の水分、栄養分、老廃物などを濾過し、必要な成分だけを尿細管から再吸収します。ナトリウム再吸収のための最後の砦が、集合管にあるミネラルコルチコイド受容体(MR)なのです。MRがあるおかげで人間は陸上でも脱水状態にならずに生きていくことができます。

出典元: ネフロンセグメントの主要な機能
https://www.jinzou.net/01/pro/sentan/vol_32/ch01.html

薬の効かない高血圧の原因は「MR活性化」だった

ところがMRの作用が強すぎるとどうなるか?ナトリウムと水分が必要以上に再吸収されると、血管の中の水分量が増え、その結果血圧が上昇するのです。本来人間の身体は、塩分が十分再吸収されれば、もうこれ以上は不要ですと判断し、MRは仕事を休みます。つまりフィードバックが働き、MRに仕事を命令するホルモンである「アルドステロン」は低下します。それなのに、MRがいつまでも休まずに仕事を続ける状態になってしまう、これが患者さんの治療抵抗性高血圧の原因でした。患者さんに4剤目の降圧剤として、MRをブロックする薬を処方したところ、 徐々に血圧が低下し、今はさらに生活習慣改善を勧めています。

出典元: レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAA系)の概略と阻害薬
https://www.jinzou.net/01/pro/sentan/vol_32/ch01.html

「MR活性化」の原因は、食塩のとりすぎ、内臓肥満だった

「原発性アルドステロン症」という病気があります。この場合もMRの活性化が持続します。しかしこの患者さんのアルドステロンは正常でした。原因は生活習慣にあったのです。実は体重が10kg以上増えていたのです。患者さんは美食家ですから、塩分を含む食事を大量に食べ続けていたのです。いくら利尿薬を処方してもそれ以上に塩分をとっていたのです。患者さんは食塩感受性の体質であったため、食塩によりRac1というたんぱく質が増え、MRがどんどん刺激されナトリウムの再吸収が止まらなくなったのです。

出典元: MR活性化をもたらす2つの経路(アルドステロン依存性経路とアルドステロン非依存性経路)とMR拮抗薬の作用   https://www.m3.com/clinical/news/689250

また閉経後ですから、皮下脂肪だけでなく内臓脂肪が増えていました。内臓脂肪細胞からはTNFα が分泌されインリン抵抗性を招きます。大量の炭水化物を食べ血糖値が上昇します、膵臓から大量のインスリンが出て血糖値を下げようとします、ところがTNFα のためにインスリンが効かないのです。患者さんは初期の糖尿病、腎臓病が始まっていました。すると本来であればコルチゾンに不活化されるべきコルチゾールが増加し、アルドステロンの代わりにMRを刺激したのです。

さらに糖尿病や腎臓病はMR遺伝子発現量を増加させ、内臓脂肪から分泌される活性酸素はMR感受性を亢進させ、レプチンはMRを安定化させます。他にもさまざまなMR活性化機序が研究されています。また脂肪細胞からはアルドステロン分泌促進因子が産生され「特発性アルドステロン症」の原因ともなるのだそうです。

血圧200以上が持続し、頭痛やふらつきに悩まされた患者さんは、4剤目の薬で難を逃れました。もしあのまま脳卒中になっていたらと、二度とそんな怖い思いはしたくないと、今はがんばって減量に励んでおり、血圧はさらに安定してきました。 いつか薬を減らすことのできる日が来ると思います。

「肥満高血圧」が増えている

さて今回は「MR関連高血圧」のお話でした。MRを阻害する薬は国内に3種類あります。2007年に発売された「スピロノラクトン」「エプレレノン」2019年に発売された「エキサセレノン」です。この患者さんに処方した薬はエプレレノンでした。他にも体重100kg前後の男性高血圧患者さんを多数診療しています。もしエプレレノンがなかったなら大変なことになっていたでしょう。でも根本的な原因は肥満なのです、肥満症を軽く考えると大変なことになります。 https://medicalcampus.jp/di/archives/226

出典元: https://censnet.org/healthcare-workers/user.php?id=182
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