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痛風発作への新しい治療

2022/5/19
[ 内科の病気 ]

痛風発作に苦しんだ8年間

60歳男性。20年ほど前から尿酸値が高いと言われていた。1か月ほど前から左足親指が腫れて痛い、「またきたかな?これで5~6回目?」それでも酒を気をつけていたらなんとかおさまった。ホッとしたのもつかの間、今後は右足親指が痛くなり、当院を受診した。親指だけでなく足の甲全体が真っ赤に腫れあがっており、これはたまったもんじゃない、風が当たっても痛いと、まさにそのとおりだ。 最近の健診で尿酸値は10.5(正常は4.5~7.0)であった。早速鎮痛消炎剤を処方し禁酒を指示した。

一週間後「全然痛みがとれない、過去最悪の痛みだ。もう一週間も禁酒している、プリン体オフのビールなら飲んでもいいか?」こんなに痛くても飲みたいという気持ちにあきれたが、心を鬼にして「プリン体が入っていなくても、アルコールはアルコールです、だめです」もう一週間鎮痛剤を処方。足背の腫れは引いてきたが、親指の腫れは引かない、本当に痛風でよいのだろうか?一週間後に整形外科を受診してもらったが、やはりレントゲン検査では異常なく、まだ痛みが強いがフェブリク(抗尿酸薬)が処方された(炎症がとれないうちに抗尿酸薬で血清尿酸値を下げると発作が再発しやすい)。しかし投与量が多いので減量して継続とし、鎮痛剤継続。

その後おさまったようで、しばらく受診されず。ところが懲りずに飲酒再開したものだから、今度は左足親指に痛風発作。その後も飲酒しては発作を繰り返し、ついに右踵から足関節に痛風発作、これは痛い、歩けたもんじゃない。座薬でなんとか痛みを抑え、専門病院を紹介。徹底的な禁酒を指示されたようだ。

当時の検査では尿酸値6.7まで改善している、しかしこれではだめなのだ。尿酸値は6未満に下げないと、関節内の尿酸結晶が溶けてくれない、つまりいつでも再発する。その後フェブリクを飲みながら、お酒も飲みながらの生活だから、尿酸値は8前後を推移した。フェブリクを増量する、酒はやめないのいたちごっこになった。以前からフェブリクを他剤に変更することを提案していたが、ユリノームには劇症肝炎というまれな副作用があり、病院でもフェブリク増量を指示されていた。

2020年5月、待ちに待った新薬ユリスが発売された。前評判以上に効果があり副作用もなさそうである。当法人では、新薬は発売1年以上経過しないと処方が許可されない、治験では見つからなかった未知の副作用がありうるからだ。ようやく発売1年が経過したところ、しばらく治療中断していた患者さんが現れた。事情を説明し、ユリス0.5㎎で開始し尿酸値が10.1→7.5に、ユリス1.0㎎に増量し尿酸値は4.8㎎に正常化した。十分目標値に到達した。これだけ効果的な薬はみたことがない。

尿酸値が高い原因には「産生過剰型」と「排泄低下型」がある
→混合型と合わせると「90%に排泄低下」が関与している

尿酸は腎臓の糸球体から濾過され、一部尿細管トランスポーター「URAT1」から再吸収される。再吸収される割合が多いほど、血液中の尿酸値は下がりにくい、これを「排泄低下型」という。患者さんの尿検査では、尿中クレアチニン225.6㎎に対し、尿中尿酸値は52.1㎎、つまり尿酸排泄率は23%であり、これではフェブリクでプリン体から尿酸への代謝を抑えても、腎臓から排泄された尿酸が再吸収されるわけだけだから薬の効きが悪いわけである。かつてはユリノームしかなかったため、医療界ではフェブリクを中心とした尿酸合成阻害薬が主流となっていた。

出典:日本医師会
https://www.med.or.jp/dl-med/people/plaza/332.pdf

尿酸の排泄経路は、2/3 腎臓 1/3 腸管
→腸管からの尿酸排泄を抑える薬では効果が下がる

ユリスは、腎臓尿細管からの尿酸再吸収を抑えるが、腸管からの排泄を抑えない。これがもうひとつのポイントである。従来の抗尿酸薬の弱点は腸管からの尿酸排泄を抑え、つまり腎臓に負担をかけながら、無理やり排泄させていた、これでは尿酸値が下がりにくい。腸管からの排泄を抑えない薬は、昔からあるアロプリノール、そしてユリスの2剤だけであるという。さらに尿酸を排泄するトランスポーターである「ABCG2」は、腸管においては「インドキシル硫酸」という尿毒症物質も排泄することがわかった。これまでの考え方は、腎機能が低下している場合は尿酸産生阻害薬を処方していたが、逆にユリスを処方することで、腸管から尿酸も尿毒症物質も排泄でき、腎臓保護作用の可能性がある。https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-17K05937/17K05937seika.pdf

患者さんに合った最適な治療を

ユリスの開発により、尿酸などの腸管排泄機構の研究が進んだ。 しかしユリスが万能なわけではない。 余分な尿酸は腎臓から尿の中に排泄されるわけだから、尿管の中で尿酸が結晶化し、尿管結石の原因となりうる。予防のためには、毎日2リットル以上の尿量を確保すること、尿のアルカリ化を行うことが必要である。そのためには食事療法やウラリットなどの内服が必要である。しかしある程度「尿酸プール」が安定すると結石のリスクは減るようである。それはまさに尿酸が腸管からも排泄されるからである。また腎機能の低下が進むとユリスの効果も減弱するかもしれない、その際はフェブリクの併用投与も考慮するとよいかもしれない。

コメント

  • M.N より:

    大変勉強になるお話をありがとうございました。
    何度も痛風発作を繰り返し、痛い思いをしていますが、自分に合ったクスリを見つける方法等はありますでしょうか?

    • 坂井輪診療所 より:

      コメントありがとうございます。まずは自分の体質を知ることが大切です。かかりつけの先生に、尿中のクレアチニンと尿酸の比率を測定してもらってください。もし「排泄低下型」「混合型」のいずれかであった場合には、腸管排泄を阻害しないユリスがお勧めです。

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