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認知症の終末期ケアとACPを考える

2022/1/9
[ 高齢者の病気 ]

96歳の男性を特養で看取らせていただきました。呼ばれていったときには、すでに息を引きとられていましたが、からだはあたたかく、まるでねむっているよう、声をかけると目を覚ますのではないかと思われるくらい、穏やかな表情でした。むくみもなく、苦しんだ様子も見られません。前日には遠方の娘さんが面会に来られ、日中には、大好きなお風呂にゆっくりつかったあとでした。今年に入ってから食事がとれなくなり、甘いアイスクリームなどを、喜んで召し上がっていました。

長寿社会 いつかはだれでも認知症になれる

自分のことは自分でしたい、でも年をとればだれでもいつか、少しずつ介護が必要になってきます。その原因として最も多い病気が「認知症」です。

2020年、男性の平均寿命は81.64歳と世界2位、女性は87.74歳で世界1位ということです(厚生労働省の統計では香港はふくまれません)。女性では、平均寿命でほぼ50%、もし95歳まで生きられれば80%以上が認知症をもっていることになります。

アルツハイマー型認知症では、記憶力の低下から始まり、MCI(軽度認知障害)の段階では日常生活には影響がありません。しかし徐々に今までふつうにできていたことが難しくなり、家族が気づきます。医療機関を受診し、認知症と診断されます。発症からほぼ10年間の経過の中で、自分で動くことが困難になり、食べることを忘れ、飲み込むことが難しくなります。

平均寿命を過ぎてこのような状態になり、人生の最期を迎える。これを病気と考えるか、自然の過程と考えるか、によってケアの対応が変わります。また現実には、認知症が進行する過程でさまざまな身体疾患にかかることがあります。悪性腫瘍、脳卒中、心筋梗塞、肺炎、腎不全など、したがって認知症診断後の平均余命は4.5年といわれています。

出典:https://medicalnote.jp/contents/150915-000001-IBGFHW

どこで、だれと、どのように暮らしたいか伝える

物忘れが気になるようになったら、また家族が気づいたら、ご本人が、これからどのように暮らしていきたいのか、思いを語り、また受けとめてあげてください。これまでどんな人生を歩んでこられたのか、これから先、どのように生きていきたいのか、家族、かかりつけ医、ケアスタッフのみなさん、折に触れ声をかけてください。ACPとは、ふだんの変わらぬ生活の中で、なにげないちょっとした会話の中で、ご本人の人生にふれることがあれば、それを積み重ね、みんなで共有することから始まります。「人生会議」などと銘打って、しゃちこばってカンファレンスを設定する必要はありません、むしろ緊張して本音が出しにくいかもしれません。

そして入院が必要になったとき、あるいは住まいを変える必要が出たとき、など変化があったときに、同じようにご本人の意向を受けとめ、共有していく、それを繰り返すことが大切です。いつか食欲が低下したり、飲み込みが悪くなり始めたとき、できれば誤嚥性肺炎を起こす前に、どのように食事をとっていきたいか、意向をうかがう。一度では結論は出ないし、気が変わることもあるでしょう。

胃ろう、サポート末梢点滴などの選択肢もあります。それぞれ一長一短です。しかし体力的にも残された人生が長くないと感じたとき、食事を「栄養補給手段」と考えるか、「食べる楽しみ」ととらえるか、どちらもまちがいではない。ただ無言の圧力により決定することなく、ひたすらご本人の意向をうかがう、そしてそれをささえることにみなで最善を尽くすことが大切だと思います。わたしは、特養の看護師から学びました。

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