坂井輪診療所

地域医療を考える
HOME » 地域医療を考える
 
医療機器

安心して在宅療養できるように~高齢者救急モデル事業開始に向けて

2021/8/13
[ 地域医療を考える ]

突然 胸が苦しい、おなかが痛い、どんどんひどくなる、それが夜間や休日だったなら、かかりつけの先生にも連絡がとれないし、不安になって救急車を呼びますよね。新潟県救急の現況(令和2年版)によれば救急車は電話してから8.9分で到着します(全国平均8.7分)。ところが、いつまでたっても出発してくれない、受けいれ先病院が決まらないのです。どこの病院も忙しい、急患対応中、緊急手術中、専門医がいない、空床ベッドがない、などなど、いくつもの電話を断られながら、救急隊員は必死に懇願します。ようやく病院についたとき、すでに44分経過(全国平均39.5分)していました。https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/shobo/1356830069900.ht

在宅医療と救急医療の連携構築を

新潟市医療計画(平成26年度版)によれば、「救急医療」「精神医療」「在宅医療」を重点項目とし、平成32年(令和2年)までに医療提供体制を構築するとあります。しかしそれぞれの分野を別々のメンバーが別々に議論しても役に立たない!現場の状況に沿っていない、なぜならば救急搬送の65%は高齢者であり、足腰も弱り、認知機能も低下し、ヘルパーさんの力を借りながら、医療も介護も在宅で受けながら、なんとか暮らしている人たちだからです。救急・精神・在宅と切り分けるのではなく、認知症もあり、在宅医療をうけている救急弱者である高齢者に対応できるように、「高齢者救急」という共通の土台に立って議論しなくてはいけない。わたしは平成29年医師会在宅医療講座で講演の機会をいただき、医師会報に学術論文として掲載されました。

新潟市西区に、高齢者在宅救急のモデル事業を

平成31年 在宅医療・救急医療連携ワーキンググループが結成され、高齢者の円滑な救急搬送につなげるため、①情報共有のために「にいがた救急連携シート」作成 ②治療やケア、過ごし方に関する希望を家族などと共有する大切さを理解してもらうために「市民向けワークショップ」 ③支援者(専門職)意思決定支援研修会 3事業がすすめられてきました。しかし翌年令和2年 新型コロナ感染症が流行し、モデル事業の準備は休止せざるをえませんでした。

しかし令和3年 コロナ禍であるからこそ、この事業をしっかりすすめなければならないと、事務局メンバーが地を這うようにがんばってくれていたようです。この秋から、ついに待望のモデル事業が開始されます。対象は高齢者施設入居者、さらにショートステイ利用者が含まれました。そうなんです、ショートステイ利用の実情は家族の短期旅行のためではない。高齢者だけの核家族が増え、医療依存度の高い高齢者を、高齢者である介護者が介護できなくなっているのです。かといって特養入居は要介護3以上、申し込んでもなかなか順番が来ない、ショートステイを長期利用するしかないのが実態です。

またショートステイでは、居宅でできる「定期訪問診療」「訪問看護」がつかえない、どうして医療依存度の高い高齢者に医療の手がとどけられないのか?悔しく悲しい思いです。明らかに政治の失敗であり、制度的な欠陥です!そしてショートステイには、看護師は日中しかいない、それも少人数です。どうやって医療行為ができるというのでしょう。利用者が急変したとき、救急搬送は大変手間取ります。家族に連絡がつきにくい、救急車に同乗したヘルパーはいつまでたっても施設に帰してもらえない。もちろん、救急病院の先生方も大変です、どのように治療すればよいのか、情報がない。

にいがた救急連携シートの運用方法

モデル事業では、救急隊がSWANネットQQにアクセスすることで、必要な患者情報が閲覧できます。家族連絡先、かかりつけ医、かかりつけ病院、常備薬、日常の体の動きなどが一覧できます。対象者数は、初年度に約2000人、来年度は、西区の介護保険要支援要介護認定者9000人に拡大されます。

「にいがた救急連携シート」は施設相談員、居宅ケアマネが記載します。記載した内容は、エクセル入力し、SWANネットQQにとりこまれます。活用はこれからですが、①シート記載内容の定期更新 ②シート記載時の情報共有(かかりつけ医など) ③救急搬送後の、現場への情報提供(退院支援に有用です) ④多職種連携ツールであるSWANネットとの連動 など課題があると思われます。つかいながらより良いものに育っていくことを期待しています。

もしも、のときのことを考えたことがありますか?

利用者さんは、この機会にぜひ、ご家族とお話合いをしてほしいと思います。どんな治療やケアを受けたいか、もし判断ができない、意思表示ができなくなったとき、だれにかわって判断してほしいか。今すぐ全部は決められなくても、くりかえしお話合いをしてほしいと思います。そのことできっと、家族との絆が深まり、よりよい人生を生きていくことができると思います。

コメントはありません。

コメントを書く

意見や質問などを記入することができます。
※名前、メールアドレスは必須項目です。
※メールアドレスが公開されることはありません。

icn_footer_phone
icn_footer_contact
top