坂井輪診療所

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高齢者糖尿病の時代 ~当院における「認知症合併糖尿病」9人のまとめ(2020.3 現在)

2020/4/4
[ 内科の病気 ]

電子カルテ患者登録システムから検索すると、当院に通院中の糖尿病患者さんの総数は252人でした。そのうち、注射治療が11人、内服治療が145人、投薬なしが96人でした。今回は、注射治療か内服治療をおこなっている156人中、認知症を併発している9人の治療状況をまとめてみました。はじめに症例を提示します(個人が特定されないように表現を変えてあります)

食べたことを忘れる認知症患者さん

70代女性 脳外科病院で認知症の診断を受けていました。脳血管性とアルツハイマー型の混合型ということです。血液検査をしたところ、なんとHBA1C=11.8% 随時血糖=515 これは大変だということで、血糖コントロールを目的に当院を紹介されました。本来であれば専門医に紹介する数値です、しかし認知症があり、ご近所であるということで紹介されたようです。

ひと昔であれば「強化インスリン療法」を行うところです。しかしまず問題になるのが、誰が注射をするのかということです。娘さんは朝早い仕事をしており、昼頃に帰ってきます。そうです、そのタイミングしか注射ができない。そこで持効型インスリンである「ランタスXR」とDPPⅣ阻害薬である「トラゼンタ」の併用でスタートしました。昼食前の血糖値を参考にインスリン投与量を調節し、1か月後に HBA1C=11.4% 随時血糖=251 なんとかなるかなと思っていた矢先、3日後に嘔吐下痢で再来、本人はケロッとしています。しかしひとばんゼイゼイしていたというのです。心不全かと思って検査をしたら心筋梗塞でした。本人は痛くもなんともない、急いで救急病院へ転送し緊急カテーテル検査、3本の冠動脈のところどころが詰まりかけていて、計4本のステントが留置されました。入院中も血糖コントロールがつかず、「ランタスXR」「ジャヌビア」処方で退院となりました。

入院中はおちつきがなく大変だったようです。場面対応は良いのですが、3歩歩けば忘れる状態、介護者の疲労も限界のため介護申請をすることに。長谷川式で10点(30点満点)と高度の認知症でした。要介護3の判定が出てデイサービス開始。ところが血糖値が安定せず、240~400を推移、娘のお話では「冷蔵庫にある孫のアイスを勝手に食べてゴミはベッドの下にかくしてある」「のどが渇くと自動販売機まで歩いて行って、ジュースを買って飲んでいる」 これでは血糖値が下がるわけありません。しかし娘は仕事をしてますし、孫も学校に行ってますから、見守りできる人がいません。どうしても HBA1C が9%を切りません。相談の上、「ジャヌビア」→「トルリシティ」に変更させていただきました。GLP1注ですから効果が出始めました、と思ったところで転倒し坐骨骨折。動けなくなりショートステイへ。

ショート中には、 HBA1C=7.4% 随時血糖=221と改善。やれやれと喜んだのもつかの間、居宅に帰るようになったら動く動く、 HBA1Cは再び9%台に。 どうも深夜に起きだして、ご飯を食べたり、大好物のアイスを冷蔵庫から出して食べていたようです。その4か月後、再び転倒して左踵骨折。今度こそは長いショートステイに入っていただきました。娘さんが体調を崩し仕事もできない、介護もできない状態となったのです。 ついにHBA1Cが7 %を切り、インスリンを漸減し、ついに中止に。さらにトルリシティも中止し、ジャヌビア内服に戻しました。しかしその後、 HBA1Cが8%まで上昇したためトルリシティ再開。 その後、HBA1Cは7%前後で推移し、心筋梗塞の再発もなく、3年たった今も、元気にショートステイで暮らしています。

9名の認知症合併糖尿病患者さんのまとめ

さて、わずか9人の患者さんですが、まとめてみますと、やはり高齢者が多く、しかし認知症患者さんに限ると、圧倒的に女性が多いようです。

薬剤の種類をみると、やはり圧倒的にDPP4阻害薬が処方されていました。他の処方も、①腎機能に影響が少ない ②できるだけ多剤併用にしないように心がけていたようです。

家族や多職種の協力が欠かせない

認知症患者さんの薬物治療のためには、家族や多職種の協力が欠かせません。同居の場合は家族の協力を、施設では多職種の協力をお願いしています。注射も家族、ショートの看護師にお願いしています。しかしケアハウスやグループホームには看護師がいませんので注射が難しくなります。ケアハウスであれば訪問看護、グループホームであれば、介護職員に見守ってもらいながら患者さん本人が注射することになりますが、難しいですね。とくに毎日のインスリン注射はむずかしく、週1回のトルリシティ注は軽症糖尿病には有用です。あと何といっても難しいのが独居です。毎日の服薬確認はできませんので、訪問薬剤師を中心に多職種の協力を得ているのが実態です。

「HbA1c」8%以上が3名、8%未満が6名

HBA1C8%のコントロール目標を達成できていない患者さんは3人でした(8.0%2人、8.3%1人)。しかしもうひと工夫をすればクリアできる数値ですので、家族や多職種の協力を得て、患者さんのためにがんばっていきたいと思います。

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