坂井輪診療所

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「肥満喘息」どうして吸入しても楽にならないの?

2020/2/16
[ 内科の病気 ]

50代男性。アレルギー歴はありません。初診時は「咳が止まりにくい」「若干痰が絡まるけど出るほどではない」「風邪が長引いているのかな?」こんな訴えでした。診察所見でも問題なく、とりあえず去痰剤と鎮咳剤を処方。まったく改善傾向がなく再来。胸部レントゲンでは肺野に異常所見なく、スパイロ検査を実施。軽度の末梢気道障害(呼気流速低下)を認め、また白血球数は正常ですが、好酸球数がごく軽度増えていました。喫煙歴もなく、初発ですので「咳喘息」の可能性を考え「吸入ステロイド」を開始しました。

再来時、多少は良いようなのですが、やはりすっきりしない。吸入薬に気管支拡張剤を追加しても効果なく、ついにぜーぜーと喘鳴が出現しました。さらにモンテルカスト内服、テオフィリン内服と追加し、ようやく日常生活が可能となりました。しかし深呼吸をさせると喘鳴があります。IGE抗体も正常範囲、RAST陰性、粉塵暴露のような職業歴もありません。

その後風邪をひき、再び喘鳴が悪化しました。経口ステロイド剤内服により軽快はしましたが、やはりすっきりとはしません。ドライパウダータイプの吸入薬は薬剤の粒子径が大きいため末梢気道に到達しないのかもと考え、エアゾールタイプに変更しましたが無効でした。ほぼありとあらゆる吸入薬を試しましたが全く変わりません。そこでようやく専門病院への受診を了解していただきました(仕事が忙しく、夕方外来しか受診できなかったのです)。

診断は変わらず、当時COPDに適応があった吸入抗コリン薬に喘息治療の適応がとれましたので試すことになりました。しかし数か月通院した結果、効果はなく、わたしのもとにもどられました。ついで2年前、新しい生物学的製剤ファセンラが重症喘息適応となり、ふたたび専門病院へ紹介させていただきました。ヘルパーT細胞(Th2)が産生するIL5を阻害することで好酸球の活性化を抑制します。 https://medicalcampus.jp/di/archives/1516

出典元: https://medicalcampus.jp/di/archives/1516

なんと1回の薬剤費が35万円という高額な治療ですが、残念ながら効果がありませんでした。もしかしたら好酸球数がそれほど多くはなかったことが原因かもしれません。病院では継続して治療を勧められたようですが、医療費負担を継続できず中止されました。そしてその後もずっと非専門医であるわたしがかかりつけ医として診療をしてきました。昨年のことですが、吸入ステロイド、気管支拡張剤、吸入抗コリン薬の3種類を同時に吸入できる製剤が販売され、COPD患者さんに良い結果が出ていました。とにかくこれまで2種類の吸入薬を朝夕に分けて何回も吸入してもらってましたので、1日1回で済む吸入を、患者さんの許可を得て試してみたのです。

その結果、おどろくほどの効果があり、まずは咳と痰が減り、ついには大きな深呼吸をしてもまったく喘鳴がしなくなったのです。長年、患者さんに申し訳ない思いで通院していただいていましたので、うれしくてわたしの方が舞い上がってしまいました。患者さんもかつてない笑顔で、100kg超の巨体がスキップしているように帰っていかれました。

わずか一例の経験でしかありませんが、ひとりの患者さんを長い期間診療させていただいた経過から、「肥満喘息の治療抵抗性」が難治化の一因でないかと考えています。内臓脂肪細胞が蓄積すると、①気道炎症 ②気道狭窄を悪化させる要因が強まるといわれています。アレルギーによらない機序であるため、吸入ステロイドが効きにくい。したがってステロイドをベースとしながらも、それを補助する薬剤をバランスよくしっかりつかうことが重要なのではないか。もちろん吸入2剤を1剤にまとめたことでコンプライアンスが向上します。しかし今回の患者さんは治療中断なくしっかり治療できていたと確信していますし、この度試用した3剤配合剤の特性があるのではないかと期待したいと思います。現在喘息適応追加のための臨床研究が進んでいるようです。

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