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「eGFR」ってなに? そんなに腎臓悪いの?

2020/1/13
[ 内科の病気 ]

昨年頃から健康診断の結果をみて「腎臓が悪いらしい」「透析になるの?」と心配されて受診される患者さんがふえました。ほとんどの患者さんが、「eGFR」が60を若干下回った程度であり、とくに受診勧奨されているわけでないのですが、これまで言われたことがないからと。確かに不安になりますよね。

そんなとき、なかなか患者さんに説明することは難しいのです。かつては腎機能の低下と言えば「クレアチニン」をみて、正常値を明らかに超えた2以上を腎不全といい、1.5くらいから注意して診療してきました(正常値は男性で1.2、女性で1.0)。もちろん糖尿病の場合だけは、タンパク尿が陽性の場合にはクレアチニンが正常であっても厳しく診療してきました。

「クレアチニン」ってなに?

クレアチニンは筋肉のエネルギー源であるクレアチンリン酸の代謝産物です。いわゆる筋肉の老廃物ですから、不用品として尿から排泄されます。このクレアチニンが血中から尿中へ排泄される能力をもって腎機能(腎臓が尿中へ 身体の老廃物を排泄する能力)を推定するわけです。ところがクレアチニンは腎糸球体から濾過された後、尿細管でも30%ほど分泌されます。つまり正確な腎機能(糸球体濾過量)をみているわけではありません。

正確な腎機能は「イヌリンクリアランス」

そこで正確な腎機能を測定するためには、腎臓以外から排泄されず、尿細管で再吸収も分泌もされない物質でないといけません。そこで2006年「イヌリン」という物質が認可され正確なGFR(糸球体濾過量)を測定することができるようになりました。しかし検査が煩雑であること、またイヌリンによる副作用があります。そこで従来通り24時間蓄尿し、クレアチニンを指標として計算し、尿細管から30%ほど分泌されますので、✕0.715補正を行い実測値とします。 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/101/5/101_1259/_pdf

「eGFR」簡便に腎機能を推算したもの

しかしそれでも大変ですよね。もっと簡単にできないかということで、血液中のクレアチニンを測定し、イヌリンクリアランスとの相関係数から計算式でもとめたものが「eGFR(推算GFR)」です。これにより一気に普及し、健診項目に追加されるようになったわけです。クレアチニンが正常範囲であっても、すでに腎機能低下が始まっていることがわかります。ただここでさらに問題があって、簡単な計算式で求められるんだけれど、真のGFR(イヌリンによる実測GFR)とは±30%ほどの誤差があるのです。 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/101/5/101_1259/_pdf

出典元: 日本内科学会雑誌 第101巻 第 5 号・平成24年 5 月10日
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/101/5/101_1259/_pdf

eGFR はどのようなときに誤差が大きくなるか?

どのようなときに誤差があるかというと、筋肉量には個人差が大きいということです。高齢者など痩せて筋肉量が減るとクレアチニンが低下します、つまり腎機能が見かけ上よくなってしまいます。逆にタンパク質を食べすぎたり運動後などはクレアチニンが上昇し腎機能が悪くなったように見えます。またシメチジンなどを服用しているとクレアチニンの尿細管分泌が抑制されます。このように大雑把なものだととらえてほしいのです。ですのでひとりの患者さんがほぼ同じ条件の場合、腎機能の経過観察に役立ちます。
補足)ユーザーの方からコメントをいただきました。高齢者では猛暑による脱水、冬期における胃腸炎などで容易に脱水になり、そのときはクレアチニンが上昇し一時的に腎不全になります。いろいろな条件でクレアチニンは変動します。

さて腎臓専門医への受診のタイミングですが、①尿たんぱく0.5g以上 ②糖尿病でeGFR<60かつ尿中アルブミン>30㎎ ③eGFR<45 いずれかの場合は、一度は腎機能の評価と生活習慣改善の注意点について指導をうけましょう。ひとつは末期腎不全を予防するため、さらに大切なことは腎機能低下とともに心筋梗塞や脳卒中が増えるのです、動脈硬化の進行予防が重要なポイントとなります。

腎臓専門医受診のタイミング

出典元: エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018   日本腎臓病学会
https://cdn.jsn.or.jp/data/CKD2018.pdf

「個別化GFR」薬の投与量を判断するとき

さて最後にお薬のお話です。ほとんどの薬は腎臓から排泄されます。したがって腎機能によって薬の量を調節する必要があります。腎機能が低下しているのに通常量を服用すると副作用が現れる危険があります。またeGFRは、患者さんの体表面積1.73㎡(女性は ✕0.739)として計算されています。小柄な方、体格の良い方はeGFRでなく、個別化GFR(身長体重による体表面積補正)を計算してもらいましょう。しかし前述のようにそもそも誤差の大きな数値ですから、あまり神経質になる必要はありません。薬剤師など専門家の指示に従ってください。

腎臓病の予防は、まずは原因疾患の治療をしっかり行うこと、生活習慣改善ではとにかく減塩が大切です。そして鎮痛消炎剤、抗菌剤など、腎機能を悪化させる可能性のある薬剤は最小限にしましょう。詳細は薬剤師、かかりつけ医にご相談ください。

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