坂井輪診療所

認知症
HOME » 認知症
 
医療機器

認知症になっても安心して暮らせるように~当院通院中の認知症患者さん56例のまとめ(2020.5現在)

2020/6/27
[ 認知症 ]

この間、新型コロナの感染を恐れ、デイサービス利用を控えざるを得なかった患者さん・家族が増えました。そしてわずか1~2か月の間に、おどろくほど足腰が弱り、認知機能の衰えも進んだ患者さんに、家族も負担が増え、「もう限界」と不安をかかえながら暮らしていました。今は緊急事態宣言が解除され、ようやく日常が戻りつつあります。認知症患者さんにも、笑顔が戻りつつあります。介護サービスのありがたみが、今回ほど身に染みたことはありません。

80~90代の女性に多いアルツハイマー病

当院の新人事務職員が、レセコンから認知症患者さんリストをつくってくれました。総勢68人、そのうち他院管理が12人いましたので、当院管理は56人ということになります。男性が18人、女性が38人と女性に多く、年齢層では男女とも80代が多くなっていました。

また原因疾患はアルツハイマー病が圧倒的で、男性の7割、女性の9割を占めていました。

居宅に31人、居宅系施設に25人、女性は施設の比率が高い

また生活の場としては、居宅が31人、居宅系施設が25人と、居宅が多くなっていました。女性に比べ、男性では施設の比率が低くなっています。男性の場合、介護者が妻であることが多いからかもしれません。年齢別には性差はありませんでした。以下、それぞれのお住まいにおける患者さんの状況をまとめてみました。

居宅での家族介護の現実、しかし独居も

居宅では31人中29人が介護認定を受けており、要介護1が最も多く、要介護3以上は5人(16%)でした。しかし介護認定をうけずにご家族のみまもりだけで生活できている方も2人おられることになります。

31人中24人はこどもさんやお孫さんと同居されていました。もちろん介護者がお仕事をされている場合もあるでしょうから、一日中そばにいてあげれるわけではありません。また高齢世帯が3人、独居が4人あり、とりわけ独居の場合は複数の介護職がかかわりながら在宅生活を支えています。

居宅系施設には介護度が高く、医療依存度の高い患者が多い

居宅系施設では25人中24人が介護認定を受けており、要介護2が最も多く、要介護3以上が8人(32%)でした。介護度の高い患者さんが多いことがわかりました。しかし介護認定をうけずに施設職員のみまもりだけで生活できている方も1人おられました。

グループホームで共同生活をされている患者さんが最も多く、比較的軽症の場合はケアハウスでの生活も可能です。常時介護を必要とする場合は、有料老人ホームか特別養護老人ホーム(特養)に入居されることが多くなります。特養は居宅系施設ではなく「介護施設」となります。要介護3以上でないと申請できませんし、入居待ち期間が長くなります。

驚くことに、ショートステイのロング利用の患者さんが6人もおられました。居宅での生活が限界となったが特養入居の条件を満たさない場合、また病院から退院許可が出たが居宅での受け入れができない場合にもショートステイが利用されます。認知症のある高齢者には複数の身体疾患を併発していることが多く、いわゆる「医療依存度」の高い場合が圧倒的です。日勤だけの、少人数の看護師だけでは対応できず、介護職員に大変な重圧がかかっています。

すべての認知症患者さんが安心して暮らせるために

そうなんです。認知症患者さんは高齢であることが多く、介護だけではなく、いつでも必要な医療を受けられるしくみが必要なのです。外来通院が可能な患者さんであれば、日常の診療が可能です。しかし通院困難な場合には「訪問診療」や「往診」が必要です。新潟県の医師数は全国ワースト1位であり、医師は在宅医療に関わる余力がありません。そこを支えてくれるいるのが「訪問看護」「訪問薬局」「訪問リハビリ」などです。

では大丈夫なのでしょうか?いえ、多職種がどんなにがんばってもできない「制度上の壁」があるんです。ショートステイには訪問診療も訪問看護もできません。必要な患者はショートにくるな!自宅に帰れ!これが国の方針です。グループホーム、ここには訪問診療はできますが、訪問看護は立ち入り禁止です。20年前に創設された「介護保険制度」は時代の変化にまったく追いついていないのです。制度上の欠陥は放置されたままで、現場の介護職員が悩み苦しんでいます。

もちろんいちばん困っているのは患者さんや家族です。おおもとの国の政治が変わらない限り、さらに困難が矛盾が深まるのは必至です。みなさんの声を、政治に届けていただきたいと思います。 さらに居宅や居宅系施設での生活が難しくなり「介護施設」に入居される方もおられます。家族や介護職の介護をうけながら、どこに生活の場を求めるか?患者さんの希望を尊重しながら、家族との話し合いを繰り返すことになります。

認知症は、長生きすればだれにでも訪れる道、明日は我が身と「当事者意識」を多くの方にもってもらいたい、かりに自分がならなくても自分の親や肉親がなることもあるでしょう。認知症になっても安心して生きていける社会でなければいけないと思います。個々の課題については、今後新人事務職員にまとめてもらう予定です。請うご期待!

icn_footer_phone
icn_footer_contact
top