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高齢者糖尿病の時代 ~当院における「糖尿病」内服治療145人のまとめ(2020.3 現在)

2020/4/4
[ 内科の病気 ]

電子カルテ患者登録システムから検索すると、当院に通院中の糖尿病患者さんの総数は252人でした。そのうち、注射治療が11人、内服治療が145人、投薬なしが96人でした。今回は、内服治療をおこなっている145人についてまとめてみました。

内服治療145人中、65歳以上の高齢者糖尿病が129人

男性が多く、65歳以上が129人(89%)を占めていました。75歳以上でも77人(53%)と後期高齢者が過半数を占めていることに驚きました。最高年齢は94歳女性、認知症もなく毎日元気に暮らしています。

高齢者には「腎機能」と「低血糖」に配慮した薬を選択

高齢者が多いためか、腎機能低下やフレイルに影響の少ない「DPP4阻害薬」が圧倒的で112人(77%)に処方されており驚きました。
若い方には、「メトホルミン」「SGLT2阻害薬」を処方していますが、65歳未満はわずか16人です。若い方は今後の長い糖尿病人生を考え、可能な限り専門クリニックに紹介させていただいています。
「αGI」は腎機能低下でも処方できますので、食後高血糖の是正のため高齢者でもつかえます。「SU剤」は無自覚低血糖のリスクがありますから最終手段として、ごく少量処方しています。たとえば、アマリール0.5mg錠を半分などから開始し、0.5mgを超えないように努力しています。
これらの組み合わせでもコントロールがつかないときは、①まずDPP4阻害薬を「トルリシティ」に変更し、次の手は ②持効型インスリンの少量投与を追加しています。高齢者にとってなにより怖いのは「低血糖」です。転倒のリスクであり、認知機能低下も危ぶまれています。

「DPPⅣ阻害薬」日本人に効果があり低血糖が少ない

ところで最も処方量の多いDPP4阻害薬ですが、2009年12月に発売されました。夢の新薬としてマスコミで繰り返しとりあげられ、患者さんからも発売前から処方希望がありました。当院では、新薬は発売後1年を経過してから処方するようにしています。その間に臨床試験(治験)で発見されなかった副作用がないか、専門病院での臨床データがそろうのを待つためです。もちろん1年間は2週間処方ですから患者さんも頻回に通院しなくてはいけません。しかしどうしてもという患者さん限定で処方開始した記憶があります。

ところが 翌年5月26日、厚生労働省は「医薬品・医療機器等安全性情報」269号を公表、いわゆる「イエローレター」です。4月までに処方された23万人のうち25人に重篤な低血糖が報告されたということでした。「夢の新薬」だったはずなのですが、大騒ぎとなり、一気に自粛へと方向転換となりました。他剤と併用した時に低血糖を起こしやすいことがわかり、またその後の研究により、この薬が日本人にたいへんよく効くことがわかりました。あれから10年が経過し、今は日本人の糖尿病患者さんになくてはならない薬としての位置を占めています。

多数の製薬会社から7製剤が発売され、グラフは発売順の処方人数です。7剤目は処方したことがありません、特段の特徴がないように思えましたので。処方している6剤のそれぞれには特徴がありますが、結局1巡した上で、発売第一号の薬が多くなってますね。若干半減期が短い、腎排泄のため腎機能の変化によって減量しなくてはいけない、など課題はありますが、なんといっても薬価がいちばん低いのです。とにかく新薬は高いので、少しでも患者さんの懐を気にしてしまいます。

「HbA1c」7%未満達成率64%

さて血糖コントロールは、7%未満達成 93人(64%)でした。8%以上が3人おられますが、全員認知症があります。84歳(8.0%) 85歳(8.3%) 89歳(8.0%)です。3人とも甘いものが大好きです。おひとりだけ短期間に悪化していますので、悪性腫瘍の精査中です。家族と相談しながら、無理のないように対応していく予定です。

出典元:日本糖尿病学会

高齢者糖尿病では内科併存疾患が多く全人的な対応が求められる

今回まとめてみて、100人以上は専門クリニックに紹介したはずなのですが、まだこれだけたくさんの患者さんがおられたことに驚きました。どうりで毎日のように血糖検査をしているわけです(笑)
さて、わたしのようなかかりつけ医の仕事は「高齢者糖尿病」のようです。わたしが診ている糖尿病患者さんには、 心房細動、心不全、気管支喘息、骨粗鬆症など、身体合併症がたくさんあります。また独居や老々介護も多く、程度の差こそあれ、フレイル、認知機能低下が始まっています。患者さんの人生とともに糖尿病を生きていく、それをささえるのが、かかりつけ医の役割と実感しました。

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